第二章 財政再建シミュレーションの検証
シミュレーション1・2 現行の社会保障制度のまま消費税のみ増税する案
二つ目は、たとえ増税して目先の赤字をなくしたところで、その効果は一時的だという事です。なぜなら、消費税の増税という行為だけでは、増え続ける社会保障費を止めた事にはならず、いずれは国債の発行が再び必要になってしまうからです。
シミュレーション2でも消費税を30%にした当初は、国の債務残高が徐々に改善されてはいきますが、240%まで来ると再びGDP比率は悪化し始めます。そして、二〇三二年から再び国債の残高が増加し始めてしまいました。
これは、二〇三〇年代から日本の年齢的な人口分布が更に激しく歪(いびつ)になり、国の社会保障費がついに四十兆円を超えてしまうからです。財政再建をするためには、やはり毎年増え続ける社会保障費の増加を、何とか食い止めなければなりません。
三つ目の問題は、今までの経験からもそうですが、消費税を上げる事について民間から相当な抵抗があり、この計画のようには簡単に税率を上げられないという事です。
消費税とは、見方を変えれば企業の売上に課せられる税金で、赤字の会社に対しても売上が存在していれば税金は徴収されてしまいます。私も体験しましたが、一番苦しかったのはやはり消費税が5%から8%に上がった時でした。その時まで三カ月に一度、四百万円程度の額を納めていましたが、それがいきなり七百万近くになった時は、いきなり金額が倍になったと感じました。
しかも、会社の利益がぎりぎりのところは、上がった瞬間、会社が赤字に転落するので、増税に対しては必死で抵抗してくる事は目に見えています。このため、30%はもとより20%でさえ、どんなに強固な内閣だったとしても、二〇四〇年までに引き上げる事は、到底不可能な事だといえるでしょう。
四つ目の理由は、消費税を30%にまで上げると、国民生活がまず持たないと予想される点です。現在、日本の歳入金額(国と地方の税収)は二〇一九年時点で、IMFの試算ではGDPの三分の一、約百九十兆円ほどになりますが、消費税を仮に30%にまで増税してみた場合、GDPにおける歳入の割合が半分近く(約二百四十六兆円)にまでなってしまいます。
この数字を他の国と比較してみた場合、例えば世界的に見て税率(歳入率)が高いといわれていたEU各国でさえも、せいぜいGDPの40%ぐらいがいいところなのです。