2. 人との違い・良さを認め合う教育の重要性

2-4:ハルトラマン参上!

気づけば、わたしはクラスで定期テストの問題の予想をできる予想屋さんになっていた。

実際のところそんなすごい能力は一切なく、ただ単純に授業を聞いていると先生が出題しそうなところがなんとなくわかるから、それでそこを中心にまとめて対策を作っていたというまでのことなのだけれど。

今のようにパソコンがあって、ささーっと当たり前にタイプしてそれをスキャンしてデータとしてあげる、ということができる時代ではなかったので、毎回、言われるたびに、同じ問題を書いて、解説と答えを作った。

みんながいい点数を取れるととても感謝されたが、わたしはもっといい点数を取れていた。みんなに問題を作っているうちに何度も何度も繰り返し同じ問題に触れるため、ほぼ完ぺきに覚えてしまっていたのだ。

そんなわけで中学くらいから教えることは日々していた。大学生になってアルバイトができるようになると学習塾の講師や家庭教師をやった。一度教えるとどの生徒もわたしのことを気に入ってくれて、ずっと教えてほしいと言ってもらえた。

そのうちそれが自分の自信につながっていったし、わたしは人の懐に入っていって心を開くのが好きだし、得意なんだなぁって気づき始めていた。だから後に何か物を売ったり、人を説得する営業が得意だったのは自然なことだったんだと思う。

自分ではあまり意識していなかったが、実は、なかなか心を開かない不登校の生徒さん、頑固で気難しい生徒さん、そういった他の先生たちがお手上げだった生徒さんたちを、塾長先生がわたしに依頼してきていたようだった。

でもわたしの授業を一度受ければ、たちまちレギュラー生徒さんとなっていった。

そこで、「発達障害」という言葉を知った。

ADHDやアスペルガー、自閉症。一見生活に支障がなくて、周りと変わらずに話したり、勉強したり、運動したりできる。

それなのに、「明日輪ゴムとクリップを持ってくる」などの持ち物を言われてちゃんと連絡帳にそれを書いても、毎回確実にと言っていいほど忘れてきてしまう、とか「教室に入ったらドアを閉める」のように、シンプルでだれでもができるようなルールを毎回忘れてしまう。