10月15日

今日は奈良の旅最終日である。西ノ京駅から近鉄奈良駅に出て、バスで柳生街道を円成寺へ向かう。

円成寺(えんじょうじ

バスに揺られて35分、「忍辱山(にんにくせん)」は田舎である。円成寺の『縁起』によれば奈良時代の開創と伝えられるが、史実的には平安中期に十一面観音を祀ったのが始まりとされる。

山門を入れば浄土式庭園が広がる。木々は紅葉し始めている。今は閉じた檜皮葺(ひわだぶき)の楼門(ろうもん)を見て、拝観入口から境内に入る。

大日如来を祀った多宝塔(たほうとう)が目に入るが、参拝者が数人いたので先に護摩堂(ごまどう)を参拝する。

今回の奈良でぜひとも拝見したかった仏像が3体あった。聖林寺十一面観音と東大寺戒壇院(かいだんいん)四天王、そしてここの大日如来である。

『ぶつぞう入門』の著者柴門ふみは「我が心のベストテン」としてこれらの仏像をベストスリーに挙げている。第一位は円成寺大日如来、第二位は聖林寺十一面観音、第三位が東大寺戒壇院四天王広目天(こうもくてん)である。

人がいなくなったのを見計らって多宝塔に行く。ガラス越しに大日如来(国宝)に合掌。ガラスが光を反射して見にくいので顔を近づけ、息でガラスが白く曇るほど食い入るように大日如来をしばらく見つめていた。

この大日如来は運慶のデビュー作とされる。みずみずしく溌剌とした青年のようでもあるが、きりっとした眼差ざしにどこか憂いを感じるのは私だけであろうか。

本堂に入る。本堂は阿弥陀堂ともいい、本尊阿弥陀如来が祀られている。

本尊の周りに四天王、背後に薬師如来、虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)、釈迦如来などが安置され、内陣の柱には「聖衆来迎図(しょうじょうらいごうず) 」といって阿弥陀如来に随行して来迎する二十五菩薩の像が描かれている。

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