第1部 相対論における空間の問題
3 移動する列車と同時性の問題
もしこれらを実験にかけて、予想外の結果や誤差が生じたなら、もう1段包括的な、例えば地球の公転なり、銀河系における地球の位置などまで考慮した視点を求めればよいだけの話だ。
ニュートン的考え方とは、ある1つの見方に対し、さらに包括的な視点が存在するならば、そちらを採用しようという実践的な柔軟さを含むものであり、それが相対論に全く欠けている部分である。
4 いわゆるローレンツ収縮がありうるとしたら
これは前の節を受けての話になる。光速度を調整する2つの手段があり、1つは時間の遅れであると書いた。それはどうやら矛盾に終わる。もう1つ、運動する物体は進行方向に縮むということ、いわゆるローレンツ収縮はこの場合、助け舟となることができるのか。
普通の相対論批判においては、なぜローレンツ収縮という現象が想定されるのかという原理を述べた後で、その考え方が妥当かどうかを検討することになると思う。
しかし私は、物が縮むと相対論が主張するのであれば、それを事実として受け止めた場合どうなるかということを単純に推測する。つまりこの思考実験に当てはめてみると、列車が縮むということを意味する。これだけですでに、矛盾の種が潜んでいるような気がするのではなかろうか。
少し極端な例を出すとわかりやすい。10光年先の星を目指す宇宙船があるとしよう。かなり光速度に近い速度で飛行しているので、目的地に着くまでに10年とちょっとかかることになる。そして極度に縮んだ状態にある。
すぐには到着しない距離の天体を目指すとき、よほど時間が必要なら巨大な船で普通に生活してもらい、世代をつないでいくという方法もあるが、10年程度なら大半の時間を冬眠状態で過ごすことになるかと思う。しかし眠ったままというわけにもいかず、多少の作業はこなすだろう。その場合もちろん内部で明かりをつけることになると思うが、その光の速度はどういうことになるのか。