第2章 「独立自尊」

自由競争の基盤である機会均等

【事例】テープが暴いた大企業の深刻な差別体質――「テキサコ社人種差別訴訟」

原告の主張だけを聞けば差別は明らかなように思えますが、訴訟で〝違法な差別〟があったかどうかを証明することは簡単ではありません。会社は、昇進や給与の〝差〟を、〝能力の差〟だと主張するでしょう。能力による〝差別〟は違法ではありません。〝違法な差別〟の根拠を提示しなければなりません。

そこで原告の弁護士事務所が行ったのが統計アナリストによる調査でした。

調査によれば、テキサコ社で黒人が上級管理職に占める割合が著しく低く、給与格差も大きいことがわかりました。白人の従業員はより頻繁に、より高い割合で昇進していました。

また、幹部候補のリストの存在も明らかになりましたが、そこには黒人の従業員の名はありませんでした。同社には、主観的な昇進基準を検証したり、格差を評価する手順もありませんでした。

翌1995年には、雇用機会均等委員会(Equal Employment Opportunity Commission、以下EEOC)が調査に乗り出します。EEOCは公民権法により設置された、人種、宗教、性別をはじめ、あらゆる〝違法な雇用差別〟を防止するための米政府内の独立機関です。調査は訴訟を受けて、連邦地方裁判所が要請したものでした。

1995年6月に発表されたEEOCの調査結果では、給与の低いグループに属する黒人は、人種を理由に昇進を拒否されていると信じるに足る合理的な理由がありました。しかし、給与の高いグループでは認められませんでした。

EEOCが乗り出したことで訴訟は全米的な注目を集め、調査結果も原告に有利に思えましたが、それでもなお〝 違法な差別〟を証明できるかどうかは微妙でした。

テキサコ社は強気でした。原告の主張に異議を唱えることはもちろん、EEOCの調査についても、社内の昇進政策の全容を考慮していないと反論しました。訴訟に勝てると自信を持っていたようです。

原告、被告の主張は正反対に分かれたまま長期戦になるかに見えました。が、そこへ突然、訴訟のゆくえを決定づける材料が現れます。録音テープでした。テキサコ社の強気を突き崩していきます。