本契約となれば、本人からロボットにきちんと引き継ぎがなされるので、親族などの情報を始め、仕事においても今まで通り、いやそれ以上の働きさえ可能になる。しかも、妻からの希望も反映できるので、家事分担などを新たに増やすことも可能ときた。

聞けば聞くほどメリットが多い気がしてくる。が、一つの疑問が湧く。

「なるほど、とてもよさそうなサービスね。ちなみに、このサービスを利用する場合、本物の夫はどうなってしまうのかしら?」

「それにつきましては、ご主人には当社の社員として、山奥にある秘密の工場にこもって働いてもらうことになります」

最新のロボットといえど、人間のように歳を取ることはできない。年に一回、老いるためのメンテナンスが行われるのだ。本物の夫はそのサンプルの役割として、そして新たに作られるロボット製造の要員として、山奥の工場で働き続けることになるのだそうだ。

非人道的な話にも聞こえるが、実情は異なるようだ。というのも、食事は和洋中さまざまな料理に、掃除が行き届いた綺麗な部屋が用意され、住環境はこの上なく整っている。加えて、それとは別に一人一人趣味を楽しめる部屋もあるのだ。

【前回の記事を読む】「結婚して十五年、夫婦の会話がめっきり減り生返事しかしない夫が…

 

【注目記事】あの日深夜に主人の部屋での出来事があってから気持ちが揺らぎ、つい聞き耳を…

【人気記事】ある日突然の呼び出し。一般社員には生涯縁のない本社人事部に足を踏み入れると…