例えば、何年か前に進路決定の最後の個別懇談で

「中学校を卒業したらゲーマーになる」

と、宣言した生徒がいた。

学級担任をはじめ、保護者からも「何を馬鹿なことを」と否定された。大人の持つ進路の範疇(はんちゅう)には「ゲーマー」などかけらもなかったからだ。

しかし、いまや〝eスポーツ〟は日本でも着実に根づき始めている。

例えば、二〇一九年に開催された「いきいき茨城ゆめ国体」(通称、「茨城国体」)では、正式種目ではなかったが「全国都道府県対抗eスポーツ選手権二〇一九IBARAKI」を実施し、選手・観客合わせて二五〇〇人余りを集めた。

いまでは多くの自治体が地域創生や活性化に活用しているし、私立の通信制高校のなかには、すべての授業をオンラインで受講できるeスポーツ専門のコースを設け、全国どこにいても専門的な知識や技術を身につけることができ、大学進学の実績も徐々に上げてきているところもある。

中学における進路指導は、生徒の適性を踏まえていろんな高校を紹介するだけでは完結しなくなった。いや、下手に勧めると生徒の選択肢を狭めてしまいかねない。進路〝指導〟ではなく、進路〝相談〟レベルにした方がいい。

生徒指導でも多様化は確実に進んでいる。

一方的に教員が学校的な価値を示して「これが正しいのだから、こうしなさい」と言っても、生徒はそれをすんなりと受け入れるとは限らなくなった。努力や勤勉といった価値ですら絶対的な正義ではなくなりつつある。