こうしたギリシア人の古代と現代との断絶を、今も主張する学者もいますが、それでもなお古代から現代への「連続性」は、現代のギリシア人の日常生活や現存する古代の遺跡にも残されています。

本書の構成は、アテネとその周辺、そしてメガラから成っています。また、本書の特徴は、私がアテネに滞在した1980年代後半の現地での体験談なども踏まえ、各遺跡の歴史的背景などを、私が撮影した写真と共に解説しています。掲載した遺跡の選択も、一般の観光客が訪れる有名な遺跡の他に、普通のガイドブックではあまり紹介されることのない、専門家以外には訪れる機会が少ない遺跡をも網羅しています。

古代ギリシア地域の心臓部であったアッティカ地方(古代におけるアテネの領域)には、アテネ市内の素晴らしい遺跡の他にたくさんの見るべきものがあります。少し足を延ばせば、秘儀で有名なエレウシスの聖域や、スニオン岬のポセイドン神殿の遺跡(夕方には、神殿は背後に沈みゆく夕陽に照らされます)、ブラウロン、ラムヌウス、オロポスの神域なども(少し専門的かもしれませんが)、一見の価値があります。

また、マラトンの平野を渡ってくる風に、はるか昔のペルシアとの戦いに思いを馳せたり、エレウテライの城壁やピュレの難攻不落の城砦(じょうさい)に登って、当時のアテネの防衛システムの一端などを垣間見ることもできます。

本書が古代の遺跡を前にして、過去の歴史に思いを馳せながら、ギリシアを旅する人にとって、ささやかな案内役を務めることができれば、著者にとってこれにまさる喜びはありません。