しかし、ゼロ才、一才、二才という、言葉によって自分の心を分析したり表現したりできない時期に身につけたクセは、ほとんど「本能」のようなものとなり、「無くなる」ということはないのである。

「この子は、中2位には、まず、不登校になります。今のところ学習も何とかついていってるようでも取り組み方は、とても弱いです。中学になると、内容も多くなり難しくなりますから。

うちに入塾した時に、四年生なのに九九を覚えきれていませんでしたよね。他にも、そういう子を知っていますが、六の段とか七の段とかになると覚えるのが面倒くさくなるんです。

わり算は四則の中で、たし算、ひき算、かけ算の全てを使う計算ですから、それも面倒になってできなくなるんです。覚えられない「頭」なのでなく、覚えようとしない「心」なのですね。

ですから、このような意欲の薄さや自分勝手度の強さは、中学になると勉強が難しくなるだけに、いろいろ大変になるんです。今から、お母さんが家にいるようにして、一緒にすごすことが必要です。

ともかく、この子は自分の意識が弱いから、いつも誰かがそばにいて話しかけたり、一緒に行動するといいのです。そばにいて話をしたりするだけでも、意識がはっきりしてボーッと自分の想念世界に入り込まなくなります」

現実に「無いもの」が見える

私が右のような事をしつこく言ったのは、お母さんの話ではC子さんは現実生活に「無いもの」が「見える」と聞いたからだ。街路を一緒に歩いている時に、C子さんは誰もいない街角に「人が見える」というのである。

「お母さん、ここは歩いている人は少ないようだけど、本当は多勢、人がいるんだよ」と、C子さんは言うのだという。

私は、C子さんはギリギリの危険な状態に在ると思った。

この子は、いつも、うっすらとした自分の想念世界にいるという強烈なクセを持っている。保育所で、あきらめてジッとしている時間が長かったためにできたクセである。それを、なるべく目ざめさせ、他者との係わりの中で意識を砥ぎすまし自我を鍛えることが大切なのだ。

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