「あんまり手にフィットしないな……古い型だからか? 俺が家に残してきたのは最新の型で軽いのに威力があった」
「これでもやっと見つけたんだ」と相手は言った。
「中古でも威力は新品と変わらん。紛争のせいでブツは手に入りにくくなった。ウクライナの奴らが降参しないからこっちの商売まであがったりだ。いい加減に諦めやがれ」
相手は口汚く罵る。
「どうせ奴らは我々に勝てっこない」
どこかで太鼓の音がする。アフリカの太鼓のようだ。向こうに黒々とした城の塔のシルエットが浮かんでいなければ、ここがミラノの真ん中だなんて分からない。
「これで四百五十ユーロとは呆れたね。アメリカのネット・セールでスミス&ウエッソンの中古ならせいぜい二百ドルだぜ」
空港の男は悪態をつく。
「嫌ならやめやがれ。こっちは幾らでも買い手はいる」
「弾はどこだ? 弾込みで二百五十でどうだ?」
何度かの掛け合いの後、相手の男はきっぱりと言った。
「三百五十。これ以上はてこでもゆずらん」
空港の男は渋々うなずいた。相手の男は弾薬の入った箱を二個男に手渡した。空港の男は上着のポケットからユーロ札を出して、数えた。そして相手の男に金を渡した。
「こいつのせいで当分俺は飲まず食わずだ」
空港の男は愚痴った。
二人の男は会話を交わしたことなど嘘だったかのように、互いに顔を見ることもなく、無言でその場を離れた。