しかし、ゴムを没収されたため、手でかき上げたり、シャツの襟元に突っ込んだりしてみたものの、長い髪がすぐに顔にかかり、まさに落ち武者のようになっていた。

2018年9月10日月曜日

オカンが、ラーの写真と共に、昔、学生時代に、僕が書いた詩を持って来てくれた。あの頃の自分は、まさか10年足らずの未来に、こんな体験をしているとは想像だにしなかった。

それなりに悩み多い日々ではあったが、将来に夢も希望も持っていた。オカンは、励ますつもりで持参してくれたのだろうが、むしろ、心が惨めで締め付けられるように痛かった。

「~空ビール瓶のクレート~」

今日ジョギングをしていると、近所の結婚式場の裏口から、中で食器洗いをしている従業員の姿と、外に置かれた空ビール瓶のクレートが見えた。ほのかに漂う、飲み干したビール瓶の匂い。

東京での学生時代にホテルのアルバイトをしていた頃を思い出した。当時の大学のすぐ隣にあるホテルで、配膳のアルバイトをしていたのだ。時給1350円で、その頃の自分には、結構な条件だった。

講演会、パーティーや結婚披露宴など各種イベントを扱い、会場のセッティングからリネンの回収、できたてほやほやのディッシュの運搬とテーブルまでの配膳、空食器集め、コース料理のテーブル請けまでやって、後片付けもする。とてもやりがいのある仕事だった。

一流と呼ばれるホテルだけあって、各地から多種多様な客層が来るわけで、そんなお客さんたちを観察するのがとても楽しかった。

時は小泉政権、歴史的な自民党圧勝の選挙の時には、自民党のお歴々の記念パーティーもあって、僕は、あの扇千景さんがスピーチをしている前で、空き皿を回収したりしていた。いい思い出である。

そして、空ビール瓶を回収所まで運ぶのは、一イベントの終わり、一日の労働の終わりであり、その匂いに僕は、ささやかな達成感と開放感を嗅ぎ取っていた。

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