第二章 子どもごころ
愛情の絆 安心感はどこから?
赤ちゃんは「泣く」という信号を発します。言葉をしゃべることができませんので、とにかく泣くことで発信するのです。それに応答する形で、赤ちゃんとお母さんとの間で情動の共有が始まります。そして、一人で歩く頃になると、子どもは探索行動を始めます。
お母さんを拠点として、自分のからだを自分の力で自由に移動できることに喜びを感じ、動き始めるのです。でも、ふと気づくとお母さんが近くにいない……。それで不安になり、お母さんのもとに戻り、安心・安全の栄養補給をしてもらって、また探索行動に出かけるのです。その時、お母さんは「安全基地」としての役割を果たします。
子どもはどんどん行動範囲を広げていきます。そうすると物理的にお母さんの近くに居続けることができなくなります。そんな時には、心の中にいるお母さんに安心・安全の栄養補給をしてもらうのです。
心の中に内在化されたお母さんが、実際にそこにいるかのように、不安な心をなだめてくれます。このような母親イメージに支えられて、情緒的な安定が保たれていくのですね。子どもの心の発達に大切なのは、この「安心感」です。
でもね、大人も同じかなあと思います。大人の情緒に必要なのも「安心感」なのではないかと、カウンセリングをしていて実感することが多くあります。不安に苛まれていると、何も手につかないでしょう? 大人の心の中にも内在化された母親イメージのようなものがあり、それによって「安心感」が支えられているのではないでしょうか。
あなたにとっての「安心感」はどこから来ていますか? 誰と一緒にいると安心できますか? 誰とくっつきたいと思いますか? 不安を感じた時に誰に会いたいですか?
愛着(愛情の絆)はいかなるPTSDをも乗り越えていけるともいわれていますから、その「安心感」をご自分の心の中で育ててもらえたらと思います。