太平洋の波の上で ─22年後─
亜美 1995年生まれ。
パラオ旅行や留学時代の経験などから、魂の繋がりを意識し始める。
亜美の父 1963年生まれ。56歳のときに病気で他界。
亜美にメッセージを残す。
アリサ 亜美の留学時代の友人。フィリピン生まれ。
佐川 手記を書いた人物の戦友。前田高地で戦死する。
パラオ
休憩のときにカフェラテを飲むのが、忙しい仕事の合間でほっとできる時間だった。このお気に入りの場所はオフィスビルの1階だが、窓からは坂道が陰となって、行き交う人や車が見えない。大きな交差点からも距離があり、周囲の雑踏が目にも耳にも入らない穴場、それだけでも安らげる。
今日も亜美はその時間を楽しみながら、最近よく見る夢のことを考えていた。こどもの頃から、太平洋の島々が大好きだった亜美。両親がこどもの頃からよく連れていってくれた旅行のせいかもしれないが、なぜか故郷へ帰ったような感覚になり、心が落ち着き、そしてよく眠れた。
今年の休みはどこへ行こうか、どこのビーチでのんびりしようかなとか考えていたここ最近、不思議な夢をたびたび見るようになった。その夢は、こどもの頃両親に連れられて行った島々、そこで潜った海や、海辺の情景が重なったような夢だった。