(5)「無入院期間」――ホスピタルフリー・サバイバル 入院しないで過ごした期間。
「ホスピタルフリー・サバイバル」は、「ホスピタリゼーションフリー・サバイバル」とよばれることもあります1)。これは、ふつう「入院していない」で家にいる(「在宅生存」という用語となりますが、「在宅生活」ともいえます)という意味になります。
入院している期間は患者さんの自由はかなり制限されることになりますから、患者さんにとって入院しないで過ごせる期間は非常に大切です。
(6)新しい「ホスピタルフリー・サバイバル」
この本で特に新しい「ホスピタルフリー・サバイバル」と言っているのは、ふつうの「ホスピタルフリー・サバイバル」と意味が違っています。後で詳しく説明しますが、単に「入院していない期間」という意味ではなく、「抗がん剤治療などのための入院も通院もしていない期間」と定義しています。
治療するために生きるか、生きるために治療するか
ある時、患者さんから“生きるために治療受けてるんだか、治療受けるために生きてるんだか、分からなくなるんだ、たいへんなんだぁ”と言われたことがありました。車がないために、汽車やバス、タクシーを乗り継いで、毎週外来で抗がん剤治療を受けている方でした。
入院だけでなく、頻回に外来受診するようでは、同じサバイバルでもその人らしい生き方ができなくなるということに今更ながら気づきました。
患者さんは「医者から知らされた余命」を「自分の自由になる残された時間」だと考えるかもしれません。抗がん剤治療を受ける場合には、治療のための定期的通院や治療効果を検査するための通院も必要です。また、抗がん剤の副作用で予定外に受診が必要となることもあります。場合によっては入院に至ることもあります。
通院も入院も、それぞれのかたちで患者さんの自由は制限されます。抗がん剤治療は患者さんに残された時間を実質的には延ばすかもしれませんが、そのかけがえのない時間の質を保証するものではありません。
参考文献
1)Neutralizing Monoclonal Antibody Treatment Reduces Hospitalization for Mild and Moderate Coronavirus Disease 2019 (COVID-19): A Real-World Experience. Verderese JP et.al. Clin Infect Dis. 2022 doi: 10.1093/cid/ciab579.
【前回の記事を読む】がんとの新しい向き合い方「ホスピタルフリー・サバイバル」