第3章 鍼灸師が扱う代表的疾患改善の施術法

腰痛症

6.私の施術法

・背部諸筋の硬結緩解の前処置長野先生は僧帽筋の寛解と、後頭動脈の血流促進の方法として、委中と飛陽に置鍼し崑崙(こんろん)を雀啄(じゃくたく)する所謂「イヒコン」を用いましたが、この処置は、僧帽筋のみならず、脊柱起立筋の寛解にも有効です。以下「イコヒン」とします。

肩背部諸筋の硬結寛解の前処置としての「陰陵泉穴へ置鍼をしての肩井穴単刺」長野先生は、骨盤内鬱血解消処置として、この手技を用いますが、この手技に加えて、私は、崑崙(こんろん)に雀啄(じゃくたく)置鍼して肩外兪と肩中兪への単刺をします。それにより肩周辺の、ほとんどの諸筋肉の硬結が寛解します。

・腹部

瘀血(おけつ)解消のために「瘀血(おけつ)処置」この瘀血(おけつ)処置は、長野式処置の根幹をなす治療法です。しかし、岡山の近藤哲二先生のいわれる虚証が、左肝経若しくは左肺経に認められる場合には、この処置は出来ません。

私は、この虚証理論を採用するようになってからは、肝実処置を以て瘀血(おけつ)処置に代えています。すなわち、右復溜・漏谷・郄門への置鍼です。瘀血(おけつ)処置と同等の効果があります(抗癌剤治療で肝臓機能が減退している患者さんには少海への置鍼を加えます)。

・冷え取り処置   

腰痛患者さんのほとんどには冷え性を確認できますので、三陰交と陰陵泉の置鍼と施灸をします(内関を加えることもあります)。

以上の全身治療をしてから、やっと患者さんの愁訴を加味して、腰痛治療をする事ができるのです。