三章「ロマンシング・デイ」当日、彼らは帰ってくる
「それ詐欺なんじゃない?」
「そうなのよ。驚きとうれしさで私は疑うことを考えもしなくて……。家のポストに、社長を勧める広告なんて入るわけないのにね。徴兵の任期を終えた稼ぎが少ない女性を狙った典型的な詐欺だわ」
マリッサが詐欺られた話を知っている人は、興味をなくしてテレビの方へ首が流されていく。
「どのようにお金を騙し取られたんだ?」
「契約書の下に小さく利率が表記されてたの。その利率があまりにも高くて借金が減るどころか月々借金が増していったのよ。本当に酷い話」
「でも、契約書に書かれていたのだからマリッサにも落ち度はあるはずでしょ。社会にはそんな落とし穴がたくさんあるぞ。それで社長が務まるのか」
俺は社長に社会の厳しさを教えてやった。
「ギルバートのいったことは気にしなくていいわ。落とし穴を作る社会がいけないのよ。社長が騙されやすいなら周りの社員たちがサポートしてあげればいいじゃない。それが助け合いよ」
ヘラはマリッサの肩を持つ。
「ふんっ」と俺は鼻で笑った。「社員たちも未熟な社長に振り回されるのは嫌に決まっている。きれいごとをいうなよ」
ヘラは呆れたように「またギルバートの口癖よ」といい、マリッサも頷く。
「口癖なんかじゃない。きれいごとが成立するのは架空の物語だけ。これは悪い人たちに騙された哀れなヒロイン少女の物語なんかじゃないんだ」
口癖の指摘をするなら他にもっとおかしな口癖を使っている人にしてもらいたい。
「でも今は小規模の会社から上場企業まで上り詰めたのよ。騙された哀れな少女の物語は人生大逆転のハッピーエンドね。ウチが読んだ小説とそっくりよ。まるで予言していたみたい」
そんな物語誰が楽しめるのか教えてほしい。
俺はマリッサに「なんでどん底になったのに大逆転ができたんだ。借金があったらどこもお金を貸してくれないだろ」と聞いた。
「それがね、ウチを助けてくれると名乗り出てくれた人が借金を全て肩代わりしてくれたのよ。借金をしていることには変わりないけど」
「何とか一件落着したみたいだね。ところで、信頼ができてマリッサのことを救ってくれた人は誰なんだ」