「聞いたらビックリすると思うわ。誰だと思う」
マリッサはクイズ形式にして、答えをもったいぶるほど相当自信があったのだろう。しかし、トラヴィスの謎すら解けていない俺がこの問題を解けるはずがないと思った。いったい誰なのか答えにたどりつけないので、先に抱いた他の疑問をぶつけてみた。
マリッサも一つ一つ丁寧に俺の疑問に答えてくれた。いつしか俺とマリッサとヘラが共通に盛り上がる話題、世間についての愚痴を語り合っていた。
「車が到着したぞ」とガーデンにいたドランとトラヴィスがはしゃぎ気味でリビングに上がり込んできた。今度は俺とマリッサとヘラの三人で玄関へ出迎えに行った。
「おまたせ、リリーを連れてきたよ」
ライトとリリーだ。リリーはヘラと違い大人びている雰囲気がなく幼い顔立ちをしていた。人ごみのなかだと埋もれてしまうほどの低身長が彼女をますます幼く見せているようだ。必要以上のことを話さない大人しい性格だ。
「皆お前たちのことを待っていたぞ。早く上がってきなよ」
「どうやら私たちが最後のようね。ライトにわざわざ迎えに来てもらって申しわけなかったわ」
リリーは上目遣いでライトに詫びる。
ライトは「僕の家の近くに見たことのない車が止まっていたんだけど、ここにいる誰かの車かな?」と俺に尋ねてきた。
「もしかしたらエマに泥をかけた車かもな。さっきまで聞いていた皆の苦労話の感じでは、マリッサとドラン以外には車を所有しているほどのお金はなさそうだったし」
加えてライトには誰も車で来ていないことも伝えた。
「じゃあ持ち主に泥をかけたことを謝らせよう」とライトは車が止まっている方へ向かおうとした。
「ほっとけ、今日皆が集まることを一番楽しみにしていたのはライトだろ。余計な面倒を起こして盛り下げるわけにはいかないだろ」
「それもそうだな」とライトはいい革製のブーツを脱いだ。
【前回の記事を読む】起業するための資金をどのようにして調達したのか、という疑問を投げかけてみた