四章 終の住処

俺は恨みを持った人が、俺を狙ってセンター国に来ることを知らずに恐れていたため、精神が病んでしまった可能性があることを伝えた。病院に一泊もしないで退院できたことは喜ばしいはずだったが、帰りはお互い会話を一切することはなかった。

自宅に帰るころには日が登り始めようとしていた。昨夜から用意していた夕食が残っていた。朝食はとても作る気にはなれないステファニー。ソファーで横になっているステファニーの頭上側に深く座り込みカチカチになったご飯を黙々と食べた。ステファニーの作るご飯はどんな時でもおいしいことには変わりない。

しばらく沈黙が続いた。ステファニーは沈黙の気まずさと恐怖が限界に達して「バートが死んじゃう……」と呟いた。いってはいけないことを口にした焦りなのか、ステファニーは咄嗟に立ち上がり、俺の顔を伺う。俺は聞こえていないふりを装ってご飯を食べ続けた。食べ終わるころ、玄関の古臭いベルが鳴った。

「どうしよう、バートを殺しにきたんだわ」ステファニーがパニックになりかけた時、「僕だ」と玄関から声が聞こえてきた。俺は沈黙を破り姿勢を起こした。ステフィーが病院にやってくる前に、院長と話したことをライトに伝えた。ライトを呼んで何を始めるつもりだとステファニーは聞いてきた。

ライトは「容態は悪くないらしいから安心したけど、僕も、家に来てくれとだけいわれたから昨夜から眠れなかったよ。でも、今つらいのはギルバートとステファニーちゃんの方だったね」といった。

俺はさっそく本題に入る。俺は命を狙われている可能性がある。ノース国の人がセンター国に入国して標的を捉える所まで行動を起こしてくることが仮に事実だとしたら、相手は相当恨みを持っている。このまま俺はじっと殺されるのを待つわけにはいかない。襲いに来たとしても返り討ちにしてやることなどは楽勝だ。

しかし、ステフィーと出会い、二人で死にかけたあの時にどんなことが起こっても、もう人を殺したりしないと誓った。それは戦争の場合だけではなく、正当防衛が認められる状況だとしても殺したりはしないと誓ったことを伝える。