五 午後……十二時四十分 ドリームランド内社員食堂
「停電みたいです。全部の機械が動かなくて、それでスタッフも警察もここにいても意味がないからって避難したんです。ゴンドラがまた落ちる可能性があるから危険だって消防の人に言われて……運営局が停電したなんて観覧車自体が危ないんじゃないかって」
「おかしいな。ドリームアイの電源室は地下にあるんだけど」
「地下?」
「さっきも言った通り、ドリームアイの電源は独自なんだよね。だからこの社員食堂は停電してなくても、ドリームアイが停電することはありえるけど……ああでも大元の電源室じゃなくて、真下の運営局に繋がる送電網がどっかやられたのかな? 落下の衝撃とかで。僕がシステム管制室を追い出される前は、ドリームアイの本体は電気は通ってたし」
「あ、そうなんですね」
「うん。だから、誰かにシステムが乗っ取られて動かせないだけなんだよね」
「停電は偶然ってことですか?」
「偶然っていうか、落下の影響で何かあったんじゃないかな? ってくらいだ。サブの運営局は? 今使えてるんじゃない?」
「みたいです。警察の人はそっちに入りました。でも、停電はしてなくても、やっぱりドリームアイは動かせないみたいですけど」
「完璧に乗っ取られてるなあ……」
宮内はため息をついた。滝口は首を縮めて宮内に問いかける。
「私、これからどうすればいいでしょうか? 乗客の方々を助けたいんですが」
「どうしたらって、警察の人に聞くしかないんじゃない? どうせそのうち、君は話を聞かれると思うし」
「えっ、どうして?」
「そりゃ、君、さっき警察の人に、『これは観覧車ジャックで犯人がいる』って言っちゃったんだろ? 当然、事情聴取があるでしょ。もし根拠がない情報をSNSとかでバラ撒かれたら捜査妨害になりかねないし。その犯人の声の話も仲山って人だけが言ってるなら、警察も半信半疑だと思う」
「そうですよね、他の乗客の方々からも話を聞きたかったんですけど、あのあと、停電でドリームアイ内部との通話は全部使えなくなっちゃって」
「まあそれは、サブの運営局から警察が連絡してみるんじゃないの? 僕らじゃもうお手上げだ。警察に任せるしかないよ」
「ですよね……ああ、でも、宮内さんとお話しできてよかったです。凄く不安だったので、少し落ち着きました」
「ならよかった。僕もちょっと、頭の中が整理できたよ」
「ありがとうございます。あの……最後に、ちょっとだけ。もし仮に犯人がいるとしたら、宮内さん、心当たりはありませんか? たとえばシステム運用部の中に怪しい人がいるとか」
「犯人? この落下事故の? いやいや滝口さん、探偵とかに憧れたりしてる?」