2. 人との違い・良さを認め合う教育の重要性
2-3:早苗先生との出会い
小学校の二年生は瞬く間のように過ぎていき、三年生も同じ先生が持ち上がりとなり、わたしにとっては過酷な日々が続いた。でも夏休み明け、そこにある別の先生が現れた。実はそのもともとの先生が産休でお休みになって、その代わりの先生がやってきたのだ。
この先生が、わたしの人生において多大な影響力を与えてくださる先生となる。それまで会ってきた小学校の先生と言えば、スーツまで行かなくてもごくごく一般的な普段着を着ていらっしゃった。
でもこの先生は、細いみつあみを束ねたジャマイカを思わせるようなヘアスタイルに、黄色や緑の鮮やかな洋服を身にまとっていた。細くてスタイルが良くて、そして目がくりくり動く、立っているだけでとても魅力的な先生で、早苗先生といった。わぁ。こんな先生がこの世の中にいるんだ。そしてわたしの担任の先生になるんだ。なんだか胸が高鳴った。
この先生は外見だけではなく本当に奇抜だった。たくさんのユニークな授業や宿題を与えてくださった。オルガンを弾きながらいろんな歌を教えてくださった。先生に教わった歌、一緒に歌った歌は、三十年以上経った今でも鮮明に覚えている。
その一つは、坂本九さんの『ともだち』という歌だった。いまだに、外を散歩している時にふいに口ずさんでしまう歌だ。先生はよくわたしたちに、詩を書かせた。その時によりテーマが異なったと思うし、詳しくは覚えていないけれど、とにかく自分の個性を思い切り表現させてくださった。
ある時、図工の時間に鬼のお面を作るという課題があった。その色塗りにおいて、わたしは思いのままにありとあらゆる色を重ね合わせ、そしてその上から、点々で塗ったり、線を付け加えたり、とにかくそれはそれは斬新なお面が仕上がった。
先生はそれをひょいと片手で持ち上げて「わぁ。なんて綺麗なの。惚れ惚れしちゃうわね」と目を細めて何度も何度もそういってくださった。わたしは天にも昇る気持ちで誇らしげだった。先生はそれを市の展覧会に出してくださった。
なんと市でも選ばれて、県の大会にまで出品された。この先生は、わたしのことを否定せずに受け入れて、認めてくれるんだ。世の中にはこういう人もいらっしゃるのだと、幼いながらにそう思えたのを今でも覚えている。