第二章 聖地の風に吹かれて

初めての観光スポット

一二月三〇日、ホテル近くのべーカリーで朝食を楽しみ、いよいよ観光地へと向かう。ネパールの見どころの一つ、ヒマラヤ最古の仏教寺院のあるスワヤンブナート。小高い丘の頂上に、ブッダの目が描かれたストゥーパ(仏塔)が立っている。歩いていく私たちは地図を見て、まずチャトラパティという大きな交差点をめざすことにした。

街角で郵便ポストを見つけた。日本はひと昔前までは円柱型だったが、ネパールは四角柱。赤い四角柱の上に黄色い四角錐が屋根のように被さっている。さらにその先端には、ツリー型の小さな飾りまで付いている。

あまりにキュートなツートンカラーのポストだったので、思わず立ち止まってシャッターを押した。歩き始めた頃は少なかった人や車が次第に増え、チャトラパティの交差点に着いたときには、ものすごい交通渋滞となっていた。

そこから細い道に入ると一変、片田舎のような風景になった。土の道路では埃が舞っている。道に捨てられたゴミも少なくない。道沿いには、食料品や日用品を売っている店がある。途中、ホテルのシーツを手洗いし、天日に干している作業に遭遇した。整然と干されて並んでいく白い布は、まるで圧巻のモダンアートだ。風にはためく白が青い空に映えて、なんとも清々しい。

ホテルを出て四〇分。田舎道には、野生の羊、牛、犬などが次々と現れる。友人いわく「ここはまるで干支のオンパレード!」。確かに名言だ。しかも、今までネパールでは猫を見かけていないことに気づく。なぜだろう。ネズミがいないのか。干支にないからか。二人の会話は迷走した。

目の前に橋が現れた。深い霧が立ち込めている。その橋のたもとで、イノシシのような子豚が五匹追いかけっこをしている。イノシシは干支にあるが豚はないなど、先ほどの会話が復活する。

橋を渡ってからは、ひたすら上り道。しばらく下を向いて歩いていたが、ふと顔を上げるとストゥーパが見えた。嬉しくて元気が出る。歩くにつれて、あのブッダの目がみるみるこちらに近づいてくる。

しかし、曲がりくねった道には水たまりや穴、たくさんのゴミが続く。泥と埃にまみれながらもひたすら歩き、ついに門まで辿り着いた。門を目の前にしたときは、さすがに感無量だった。そこからの大変な行程を知る由もなく……。

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