三 学校の相対化現象

―見放される公立学校―

(1)公立中学校離れ

残念ながら、私の予感は、的中しようとしている。確かに、いまでも公立中学校は存在する。しかし、あり得ないはずだった〝まさか〟が起きた。それは数年前の二月、校区に在籍する六年生の私立中学合格者が急増していることがわかったのだ。それはまさに想定外だった。

中学校では校区の六年生の児童数の増減を絶えず気にしている。それは、次の新入生の人数によって学級数が決まり、学級数に見合う正規の教員数が決められるからだ。学級が減れば、その分教員も減らされる。

中学校の一学級の人数は四〇人が限度だから、特別支援学級に入級が決まっている児童を除いた新入生の数が四〇の倍数に近くなっていないか、常に気になるのである。

「そんなもの考えてもしょうがないじゃないか」と思われるかもしれないが、正規の教員数が現状維持となるか減員になるかは、次年度の校内人事に大きな影響を与える。特に、二名減などとなってしまった場合には、学校長の来年度の構想は根底から覆されることになる。

だから、新一年生の学級が減りそうなとき、校長は早い時期から来年の構想について何通りかのパターンを練っておく必要がある。

また、教員が減るとなれば、誰が異動するかという問題も出てくる。その一人(二人)が主幹教諭レベルに及ぶと、学校運営はかなり厳しい状況になる。最悪の場合、柱となる教員が複数異動して、代わりが一人も来ないという事態となる。そうなると学校の基幹部分がぐらついてしまう。

そのため、私立中学校の合格発表の時期になると、どの中学校でも教頭が校区の小学校に何度も電話をして、入試の結果を確認する。まさに、戦々恐々の日々である。

(2)〝まさか〟はなぜ起こったか

〝まさか〟が起こったその年、年度当初の児童数と例年の合格者数の傾向からみて、どう考えても学級減にはならないと思っていた。数十人もの余裕があったからだ。

ところが、蓋を開けてみると、その余裕分を大きく超える私学合格者が確認された。私は教頭が作成した一覧を見て一瞬目を疑った。これは確実に一学級減になる。「ついにきたか」と直感した。公立中学校離れがついにこんな田舎でも顕在化したのである。