「朱美、アルコールも少し飲んでいきなよ。俺は帰って勉強しなきゃ」

「うううん。飲みたくなったらノンアルがあるから。私もやることあるから帰る」

お会計の時、あたし、

「大人でも勉強するんですか?」って聞いたら、

「あやちゃんだって好きなものがあったら、一日十分でもやるといいよ」って。ああ、あたしが勉強できないのは、それだったんだと思った。

「動物は大きいやつからマウスまでいっぱいいるだろ? 動物病院って言っているからには、対応範囲を広げなきゃならないんだ。でも、小さいのはあまり付き合ったことがなくて、勉強してるところなんだ。勉強は限りないよ。大きい子はたくさん経験してるんだけどね。この前の休みには水族館に行ってイルカの診察を教えてもらったんだ。イルカはまるで犬みたいだったなあ。象なんて懐くと久しぶりに会うと泣くんだ。こっちも泣いちゃったり」

先輩たち、「かっこいい」って思わず叫んだら、「かっこ良くなりたいよ」って。

朱美さんも笑って手を振って、先生の手を掴んで、二人とも暖簾をくぐって帰っていった。

おばちゃんに、「朱美さんは晩ご飯作らないの?」って聞いたら、

「朝、昼はメグ先生はもちろんだけど、自宅に来た人の分をささっと作ってるよ。出入りが多いんだよ、先生のうちは。でも決まって、朝はトーストとコーヒーと山盛りサラダに納豆。ベランダで先生とお野菜いっぱい作ってる。お昼はお握りとサラダとお味噌汁。メグ先生が子供の頃からそうなんだって。休みの日に何度も食べさせてもらったけど、お店では味わえない、家庭料理の見本みたいよ。でも、『朱美も働き詰めなんだから、休みの日以外の夜は、豪華レストランでディナーしよう』ってメグ先生が。あっ、豪華レストランって、ここね」っておばちゃん、ぺろりと舌を出す。

「休みの日はきちんと晩ご飯も作ってるわよ。それにうちが休みの土日も」

「朱美ちゃん、メグ先生が休みの水木も料理の仕方をよく聞きに来るんだ、ホントに可愛い娘だよ。ほら、うちのラディッシュは先生とこで作ったヤツ。ベランダ中、野菜だらけだよ。しかも花も綺麗に植えられててさ。裏の農家の人によく聞くんだってよ。うちの野菜も裏の農家から安くもらってんだ。先生と朱美ちゃん、よく畑の手伝いに行ってるよ」っておじちゃんが言う。

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