(1)まず、集団調査の結果が示されています。

〈Hommaの研究〉 40歳以上の4570人を対象に調査。

夜間頻尿1回以上の方は69%、3回以上が14%を占め、最も影響の大きい下部尿路症状(LUTS)は38%にみられた。(2006年)

〈Fukutaの研究〉 40〜79歳男性135人を対象に調査。

15年の観察で平均夜間排尿回数は1・1回から1・6回に有意に増加した。夜間頻尿は最も経時的変化が顕著なLUTSであった。(2012年)〈Hirayamaの研究〉 65歳以上の3685人を対象に調査。

1年間に夜間頻尿≧2の割合は47・0%から50・3%に増加した。そのうち、20%は新規出現したものであり、15・4%は消失(改善?)した。(2013年)

(2)次に一般住民を対象に夜間頻尿のリスク因子や夜間頻尿が及ぼす影響を検討した研究結果が示されています。

〈Yoshimuraの研究〉

・男性4568人、女性1949人を対象に調査。夜間排尿1回以上の方は28・5%を占め、高血圧や糖尿病と関連を示す。性差なし。(2004年)

・41〜70歳まで約1150人を対象に調査。温暖な地区では冬に悪化するなど、季節と関連を示す。(2007年)

・女性5980人(平均52・6歳)を対象に調査。夜間頻尿(2回以上の夜間排尿)の方は、年齢、睡眠時間(不眠)、尿意切迫感、log(BNP)(心臓の負荷を示すホルモン数値)、腹囲、BMI、閉経、高血圧の既往と関連を示す。

〈Nakagawaの研究〉

70歳以上の784人を対象に調査。夜間頻尿2回以上の方は、その後5年間の転倒による骨折、死亡のリスクが、それぞれ2・20倍、1・91倍に増加。(2010年)

〈Obayashiの研究〉

・60歳以上の861人を調査。尿中メラトニン濃度と夜間頻尿は逆相関を示す。(2014年)

・60歳以上の1086人を調査。夜間排尿回数は、客観的および主観的な睡眠障害と関係を示す。(2015年)

・60歳以上の866人を調査。夜間頻尿2回以上は、その後2年間のうつの新規発症のリスク因子である。睡眠を含めて補正すると、この傾向は男性のみで有意であることを示した。(2017年)

〈Saekiの研究〉

・60歳以上の1065人を調査。日中の室温が低いと夜間頻尿のリスクが高いことが示された。(2016年)

〈Itoの研究〉

・18歳以上の女性18952人を調査。低いBMI(<18・5kg/m2)と高いBMI (>25kg/m2)のいずれも、夜間頻尿2回以上のリスク因子であることを示す。(2019年)

ここで見る限り夜間頻尿の背景因子として、本書が話題とする「代謝」については触れられておらず、疫学調査にかかりにくい項目になるのかもしれません。季節的変化については、Yoshimura、Saekiの研究で関係性が調べられていることが把握できます。また、高血圧や糖尿病との関連性が指摘されています。早朝では血圧が夜間尿量の増加に関係があると思われます。

【前回の記事を読む】夜間頻尿の危険信号とは?夜間のトイレ回数1>2回は正常