選択死

今日は久しぶりに電車に乗って一人でお出かけをした。降りた駅で行きたい方向とは逆のホームに出てしまった。全然人も歩いておらずどんよりした空気で、辺りを見渡すと色々なお店の看板が遠くに見えた。

少し町の様子が気になり歩いていくと、飲み屋さんや風俗店もあり、日中でも薄暗くて治安が悪そうな地域だ。歩いていると、黒いセダンが歩道をまたいで停まっていて、怖そうな柄の悪い男が車の左側の窓から顔を出し、ビルの方に手を出して大声で怒鳴っている。

車の横を通り過ぎようと思ったときに、その男にギロっと睨まれたような気がした。ビルから、髪の長い女性が出てきて、茶封筒の中のお金を数えてその男に渡している。その女性の顔を見ると、複数のアザや傷があり、ひどい状況だった。警察へ連絡をしようと思った。早歩きでコンビニに入った。

すると、その男が2人の男を引き連れてコンビニに入ってきた。嫌だなーと思ってコンビニから出て急いで駅へ戻ろうとすると、黒い車が横を通り過ぎた。と思ったとたん車は、私の目の前で停まり金髪の男が近づいてきて、私は何かで口元を押さえつけられて気絶してしまった……。

 

目を覚ますと、手と足をロープで縛られ、口元はガムテープで塞がれていた。うっすら目を開けると注射器や白い粉が見える。男たちの声が聞こえてきた。

「急ぎましょうよ、もうあの女使えないっすよ。この女に、あの女の代わりになってもらわないと俺たちがやばいですって」

「まずは、身体検査しないとな……2人にしてくれ」と男が言うと他2人は出ていった。

体を揺すられて目を開けると、坊主頭の男が縄をほどいて、口元に貼られていたガムテープをはがした。

「大竹久しぶりだな!」

えっ……なんで知ってるの? 怖くなって首を振った。男は私の鞄から財布を取り出し中に入れていた診察券や免許証を出して見せた。だからわかったのか……、と思った。

「俺のことわかるか? 中学1年の時、お前に3回も告った奴……」

サングラスを外して恥ずかしそうに話す男。口元のほくろ……何か見覚えがあるような、無いような……。

「あっ! 矢本……矢沢くん?」

中学一年の時に3回告白してきた矢沢くんだった。