第一章 へんろの旅、初めの一歩―― 出掛ける前に準備する物、知っておく事

二 へんろ旅の概略について

へんろ旅とひと口にいっても、多くの皆さんにはなかなかイメージがしにくいかもしれません。そこで、まずはへんろ旅のおおよその距離や、歩いての平均的な所要日数・時間・経費等についてご紹介します。これについても詳しい情報は第二章、および私自身の記録として第七章にまとめてありますので、あわせてご覧下さい。

まず距離ですが、これは札所間の距離すなわち寺山門と寺山門の距離の合計がおよそ1140km、これに境内(お寺の域内はかなり広い場合もあり、またその多くに長い石段があります)を歩く距離の合計約20kmを足した、おおよそ1160kmと考えればいいでしょう。

ちなみに、この数字は公開されている一般情報に、私が歩数計を利用して計測したデータ、また個人的な体感距離を勘案したものです。

これを歩いて回る場合、所要時間は35日プラスマイナス5日で、おおよそ1カ月が目途となります。もちろん、へんろ旅には歩いて回る以外にもマイカーやバイク、自転車等の交通機関を使ったり、またバスツアーによる参拝も色々とありますので、時にはこれらと徒歩を組み合わせる等、ご自身に合うと思うスタイルで始められるといいでしょう。

私自身もマイカーを使って回ったり、徒歩の際にも拠点(野宿の際の宿泊)として使う等、臨機応変に活用しました。ちなみにマイカーのみを使っての所要日数は、8日プラスマイナス1日というところで、ほぼ1週間が目安になります。

へんろの順番、すなわち札所参拝の順路ですが、これは1番から始める方法はもちろんの事、ご自分の利便、あるいは願掛けの本意(ほい)により、こだわりなくいずれかの札寺から始めるのもいいでしょう。その上で、88カ寺を全て回って結願したなら、お大師様の入定(にゅうじょう) されている高野山の御廟へお礼参りに行きます。

回り方には、番号順に小さい方から回る順打ち、逆に数字の大きい方から回る逆打ち、順逆打ち、88カ寺を一気に回る通し打ち、阿波・土佐・伊予・讃岐という国で区切る一国打ち、きりのいい札寺で区切る区切り打ち等があり、時間と体力、予算等とも考え合わせてみて下さい。

ちなみに「打ち」というのは、かつてのへんろが願いの木札を寺のお堂等に打ちつけた事から、この様にいっています。