「もちろんです。いつでも貴男の前にあらわれます」

「なるほど、それならいい。一方的に突然必要性があるからと、いつでもあらわれたら、僕も困る時があるかもしれない」

「その心配はいりません。貴男が困る時にはあらわれないシステムです。貴男の心の内側を把握できるのが我々のすぐれた所ですから」

「我々? と言いました?」

「ええ、我々」

「他にも仲間的な人型がいるんですか?」

「もちろんです。これまでどれだけ人間は戦争をしてきたと思ってるんですか。数えきれぬほどです。そのたびに多くの生命がうばわれたくさんの人型が残った」

「なるほど、人型さんのおっしゃるとおりだ」

「はい」

「ですが………なぜ人型さんが僕のために突然あらわれたことの答えにはなっていない気がするのですが………」

「いずれわかります。今出してもいいのですが、出したところで、それが変化することはありませんので、自然に時がそれを貴男に知らせることに任せても、何の問題もないと思います」

「なんだかめちゃくちゃこわいんですけど」

「大丈夫です。貴男はめちゃくちゃ強い光輝を持っておられる方だ。それは貴男に必要なことなのです」

「必要性ですか」

「そのとおり」

その日修作と人型はそうして別れた。

彼はまっすぐ自分のねぐらに帰り、いつも通り風呂に入り、午前0時二十分にはベッドに横になった。

今日起こった出来事を思い出そうとしたが、思い出す前に、強烈な眠気におそわれて、修作は寝落ちしてしまった。

翌朝、八時十五分にセットした目覚ましのベルで起き上がり、出勤の準備をはじめた。

いつもと変わらぬ朝、いつもと同じルーティン。

明日のことはわからない。

でも、明日になってそれが今日になってみると、またぞろ変わりもしない日常を繰り返しているけれど、厳密には同じではない。少しずつ少しずつ、目に見えることも、目に見えない何かも変化をしている。確実に。

肉体は一日一日老化の道を進み、歯みがき粉は昨日より二センチは減っている。一袋買った朝食のパンは二枚少なくなり、駅まで歩く靴底も減っていく。定期は期限が切れる日がまた一日近づく。いったい変わらないものなんてこの世界にはあるのだろうか。

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