四十四
修作は実際に返答があることに驚き、次の言葉を用意していないのに、あわててしまった。
「えっ、と……あのー、そのー、…………不思議な格好をしていますね!?」
なんだよ、それは、やっと出た言葉が、不思議な格好してますねって………………。
「不思議ですか!? 別に変わっていないと思いますが、見た目だけ見たら、少しは違うかもわかりませんけれど」
「いやいやいや、少しじゃないですよ」
「そうですか、通りすぎていく人たちの影を見てください、何のちがいがありますか!?」
「影!? まさか、僕の影だなんて言うんじゃないでしょうね!?」
「言いませんよ。実際影ではありませんからね」
「じゃ何です。そしてなぜ僕にしか見えないのです?」
「戦争で焼死した人間の、人型です。実体は黒こげになって消滅したけれど、人型だけがこの世界に残ったのです。今では、人型こそがこうして実体となっているわけです」
「そうですか……まあーそれは信じたとしても、どうして僕にしか見えないのです?」
「波長です。波長が合うのです。他の人に見えないのは、波長が合致しないのです。合う人が見れば見えるのです。今のところあなただけのようですが………」
波長!? なんで自分だけが死者の影であるペラペラの人型と波長が合うのだ……………。
「あなたとはいつどこへ行けば今日のように会えるのです?」
「さあー、わかりません。必要があればまた会うはずです」
「必要とは?」
「必要です。必要がなければ会う必要はないでしょう」
「うむ……それは僕が必要? あなたに必要、どちらです?」
「どっちもです。どちらかが必要とあれば会うはずです」
「今日はなぜ、どのような必要性で?」
「今日は顔合わせのようなものです。お互い初対面のアイサツの必要性です。一度会えば、我々はもう次からは初対面ではなく、知り合いとして会えますからね」
「しかしどうしてこれまで会うことがなかったのです。今日、突然、顔合わせって……………」
「ですから必要性です。今までは必要性がなかったからですが、必要性は突然やってくるものです。明日のことが誰にも未経験でわからないように………」
「では、僕が必要とすれば、いつでもあなたに会えるんですか?」