第2話 素粒子って何
8月27日
サンクトペテルブルグに移動してエカテリーナ宮殿に行った。百貨店の前から出ているツアーバスで行こうかと迷ったが、やはり地元のバスに乗ってみたかったので、乗り場までメトロで向かった。
駅を出てみると、バスはひっきりなしに来るのだが行き先が書いてないのでどれに乗ればいいかわからない。エカテリーナも英語読みなので通じない。しばらく誰彼となく聞き、人の動きを見、どうしたらいいかと思案に暮れた。もう何が何だかわからないので停まったバスに片っ端から聞こうと思った。
「エカテリーナキャッスルに行きますか」。1台目に声をかけると、バスの運転手は大きくうなずいてくれた。乗客も何人かうなずいてくれる。これぞ案ずるより産むがやすし。
バスに乗り込んだら隣の女性が、30分くらいかかるけど行きますよと教えてくれた。途中何度も停まりその女性も降りたが、降りる時、運転手に何か話しかけ、私の方を見て、頼んであげたからねというように笑いかけてくれた。
それですっかり安心してしまった。ツァールスコエ・セローという声がかかり、大勢の人が降りて行った後も私は何の疑いもしなかった。おとぎ話にでてくるような淡い色彩の可愛い駅に停まった時にも、もしかしたらこのへんかと思いはしたが運転手は何も言わないから大丈夫だと思おうとした。
しかし人は少なくなりどんどん寂しいのどかな道に入っていく。さすがに心配になったのである鉄道の駅に停まったとき、運転手にエカテリーナはまだですか、と聞いた。そのときのびっくりした顔といったら、今でも鮮明に思い出せるくらい。
すぐに降りろと手振りで教えてくれる。私もあわてて何も聞かずに降りた。ああこれから一体どうすればいいのと、すがるような思いで駅の人に聞いた。駅の人は何でもないようにプーシキンまで戻ればいい、と言う。
そういえば前日行き方を聞いた人は何度もプーシキンという地名を言っていた。すぐに列車があると言って、駅員が親切にも乗り場まで連れて行ってくれた。列車のガラガラさ加減がまた私を不安にさせる。プーシキンは一駅目だ。降りた人も数人、小さな駅で駅員もいない。
通りかかった男性がこれまた親切な人で、行き方を聞いたら、指で盛んに数字を表す。でも私には何のことだかわからない。わかったかという素振りをするので、わからないという素振りで返す。