筆者コメント

人体の細胞数は37兆個という膨大な数で、銀河系の星の数の10倍以上といわれます。細胞の種類は数百種ですが、皮膚、筋肉、脂肪、骨、神経、肝臓、腎臓、膵臓などの細胞は、全て1個の受精卵から始まったものであり、全て、同じDNAを持っています(注2

このように、人体を構成する細胞群は分割によって同じ細胞を増やす初期の段階から、次第に種類の異なる細胞に分裂し、さらに、立体的な臓器を生み出します。このことをバーカーは、胎児期には42サイクルの細胞分裂を繰り返すと述べているのでしょう。

一方、ほぼ人体の構造ができあがって出生した後は、成人するまで約20倍に体重は増えますが(例、3キログラムから60キログラム)、それは、主として個々の細胞が肥大化するだけです。

ただ、幼児から学童、思春期、成人と成長していく過程で、5サイクルの細胞分裂が必要とバーカーは述べていますが、胎児期に比べて、出生後は細胞分裂のサイクルが少ないことは容易に想像できます。

発生学の知識に乏しい筆者には、具体的なサイクルの中身はよくわかりません。ただ、遺伝子にエピジェネティックな変化が起こって、新たなる細胞群が生み出されていると考えます。例えば、出生後も脳の神経回路の形成が続くように。

また、人の細胞には、分裂回数に制限があることが知られています。成人細胞の培養で、50~60回の分裂で細胞は老化して死ぬことがわかりました(ヘイフリック限界、Hayflick limit)。このことが、バーカーの言う胎児期の細胞分裂サイクルや生後の細胞分裂サイクルと、どのような関連があるのか、筆者にはよくわかりません。

しかし、がん細胞ならいざ知らず、正常体細胞の分裂回数には、限りがあることがわかります。


(注1 Masaki Kamakura. Royalactin induces queen differentiation in honeybees. Nature 2011; 473: 478-483

(注2  ジェイミー・A・デイヴィス著 橘明美訳『人体はこうして作られる  ひとつの細胞から始まったわたしたち』紀伊國屋書店,2018

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