1年後には「トヨタ自主研を崩さないための合宿研修」をやって、失敗体験をさらけ出し合いました。「定着」「我がものにする」ために、従来とは異なった活動をし、何とか「継続活動化」=「エンドレス改善」に近付くことができ始めたと実感しました。
その後、冷暖房製造1部(エアコン用熱交換器、コンプレッサ製造)に移ってからも同様の取り組みを続け、再度英国で赴任したエアコン製造会社でも、欧州トヨタ仕入先グループの改善でも失敗を繰り返しながら「エンドレス改善」を目指しました。
2度目の帰国後に着任したのはGAC㈱でした。GACは、乗用車以外のエアコン、冷暖房機器を中心に製造しており、少量多種生産であることに加えて、季節商品(遠赤外線ヒータ、事業所用スポットクーラなど)を多く扱っており、「売れの平準化」はとても期待できません。
この状況でトヨタ生産方式のツールである「小ロット生産、後工程引き取り・後補充生産、『かんばん』を使った生産指示と進捗管理等」はすんなりと使えず、その中でどうすれば「継続して生産コストを改善し、モノづくりの競争力を高められるか」を考え、もがきました。
デンソー退社後は、10年間まったく異業種の配管部品を製造・販売しているワシノ機器㈱で経営者として建て直しをやりました。従業員が90人程度の、関連会社のない独立した中小企業での再構築、競争力強化は、モノづくり以外の営業、人事、品質管理などで新たなチャレンジをする中で、失敗と挽回の連続でした。
工場におけるモノづくり改善も、ベースとなる事業環境が大きく異なっていました。1個単位の受注生産と見込み生産がミックスしており、自動車部品業界とはまったく異なりました。
この中でモノづくりの競争力を強化するための工場現場のベース作り、人財育成、管理者育成などに従来以上に苦労しましたし、新しい発見もたくさんありました。
結局、重要なのは「エンドレス改善」の基本に戻ることでした。
仕入先との活動も「自社の押し売り、自社の成功体験の展開」では進められないのが当たり前で、「仕入先の立場でどうやって継続的なコスト改善をやってもらうか」が重要な課題でした。標準化された製品・部品を、平準化された注文に応じて生産する状況での「恵まれた改善」ではなく、どの会社でも、どんな工場でもモノづくりの競争力向上に向けた改善が必要であることを痛感しました。
そこで、中小企業で奮戦している仲間の皆さんに、私の失敗体験をベースにした挽回活動をまとめることで、ここから何らかの気づきを得ていただき、明日に向けた一歩の参考になれば、と考えたのです。