とある雪原の丘

不思議な感覚に身を包まれる。

立ち上がる膂(りょ)力すら残っていなかった肉体に、奥底から力が漲ってくるのを、少女は感じた。

凍える寒さも忘れ、内側から体温が暖まっていく。

転生していると見紛うほど、痩せこけていた体に、だんだんと健康的な肉が付いていく。

傷だらけだった肌も、たちどころに綺麗に治っていった。

(気持ちいい・・・・・・・・・。)

これは神様が、最後に自分に見せてくれた、幸せな幻なのだと、少女はそう思った。

(ありがとう・・・・・・・・・。)

優しい光に包まれながら、ゆっくりと、少女は意識を手放すのだった。

魔物討伐の帰り道(夜)

「ユウ。さっきからなに読んでるんだ?」

「精霊書。」

「精霊?」

「実際には見えないけど、この世界に存在している『生きている魔力』のこと。」

「生きている魔力?」

「そう。意志を持っていて、人と話すこともできると言い伝えられているんだ。」

「話したことあるのか?」

「まさか、ないよ。言い伝えられているだけで、精霊と話したことがある人なんて・・・・・・・いないんじゃないかな?」

「そうか。」

「でも、シンなら話せるかもね。」

「なんでだよ。」

「どんな人よりも、優しくて強いから。」

「優しくねぇだろ。強いだけだ。」

「そういうことにしておくね。」

「・・・・・・・・・・・・」

シンは、ぶっきらぼうに照れるのだった。