王国(中心都市)

地獄が広がっていた。

炎が燃え盛り、建物は全壊、人々は逃げ惑い、辺り一面に夥しい量の陰惨な死が転がっている。

「勇者の楽園」と呼ばれていた面影は、もはやどこにもなかった。

ガチャンガチャン

奇怪な足音を響かせて、都市・・・・・いや、王国全土を地獄に変えた張本人が、口を開く。

「こんなものか。」

そいつの声は、なにかが混じっているような悍ましい音を出していた。

「ダイナゾールは倒されたみたいだが、いい囮役になってくれた。」

「勇者と付き人がいないこの隙を狙って、2人の居場所を奪う・・・・・・・・・我ながらいい作戦だな。」

魔王軍四天王、最後の1人。

知将・イビルゴーレム。

その姿形は・・・・・「全身に武器を格納した土偶」・・・・・そんな表現を体現していた。

イビルゴーレムの最大の特徴は、幾千万にも及ぶ絶望的な数の量産型がいることである。

意志を持つ本体が倒されれば、他のイビルゴーレムも活動を停止する・・・・・・・・・が、逆に本体が倒されない限り、イビルゴーレム軍団は活動を続けてしまうのだ。

「王様と邪魔な兵士も殺して、その城も既に炎の宴と化している、この国ももう終わりだな・・・・・・・・一点を除いて。」

本体と量産型は視覚を共有している。

本体であるイビルゴーレムには、まだ破壊できていない場所があることを知られていた。

「妙な抵抗をしている人間が1人、いるみたいだな。」