平日四時間で千八百円の飯付き。月に十日入って一万八千円。親からの仕送りは月六万円だから、その四分の一ほどになる。アルバイトの仕事内容はどんなものだろうか。おっちゃんが調理にかかり切りになれば、店が必要とする残りの仕事のほとんどをアルバイト生がするのだろうか。中華鍋を振るおっちゃんの背を見ながら西山の話を聞いて、夏生は思った。
ジャーッと湯気を上げながらレバー炒めが皿に盛られた。丼に飯を盛り、「レバーは自分やろ」と、おっちゃんは西山の前のカウンターにレバー炒め定食を置いた。西山はいつも食べているらしい。
夏生が初めて見るレバー炒めは、ドロリと餡かけ仕立てになっていた。五センチ四方大に切られたレバーは熱を吸って薄い茶色のような灰色のような色になっている。そのレバーたちを包むように隠すように、ザク切りのキャベツと薄切りの玉ねぎが絡まっていた。
先に食べるでと一言呟いて、西山は湯気が立つ皿からレバーと野菜を箸で摘まみ上げ、ハフッと口の中に押し込んだ。二口目を飲み込んでから、
「定食やしな、ほんまは沢庵も付いてんねんけど、俺、沢庵苦手やねん」
西山は早口だが、食べるのも速かった。皿に盛られたレバー炒めはもう半分ほどに減っている。ほとんど野菜になったレバー炒めを、西山は箸ですくって飯の上にかけた。そして、その餡かけ野菜がのった飯を一口頬張った。
「これすると丼におかずが付くやろ。そやでおっちゃん嫌がるねん。飯だけの丼やったら水洗いだけで済むんやな」
西山は自分をアルバイトに誘っている。夏生はすっかり理解した。