三 大島のコンバット
テレビ放送が始まったのが昭和二十八(一九五三)年ですが、一般に普及したのはみかどが開店した四年後の昭和三十四年頃です。
みかどに並ぶ駄菓子のパッケージやオマケにも人気のキャラクターが登場したり、店に来る子どもたちもテレビ番組を話題にしたりするので、私や両親も、自然とテレビ番組やマンガ、アニメに詳しくなりました。
(昭和三十三年には)オリーブという恋人がいるポパイに夢中になり、昭和三十八年には『鉄腕アトム』『鉄人28号』『エイトマン』『狼少年ケン』というマンガアニメブームがやってきました。
その後も、『オバケのQ太郎』『ジャングル大帝』『おそ松くん』『魔法使いサリー』『ゲゲゲの鬼太郎』『サスケ』『ひみつのアッコちゃん』『ロボタン』『パーマン』『巨人の星』『タイガーマスク』『ムーミン』――そして、『ウルトラマン』へと繋がっていきます。マンガは衰退することなく、人気作品が次から次へと続きました。
また、野球に相撲にプロレスのカードが、みかどでも飛ぶように売れていました。一大ブームを起こしたものの中では、シール付きのビックリマンチョコです。子どもたちのアイドルで、未だに売れ続けております。
夕方、父の軽自動車が問屋から商品をどっさり積んで戻ってくると、数人の子どもが車に群がったものです。
「おじさん、おじさん! ビックリマンチョコ持って来てくれた?」
「持ってきたよ……」
素っ気ない口ぶりの父なのに、子どもたちはニコニコしながら、
「おじさん、サンキュー、サンキュー」
「僕、三つちょうだい」
「俺は二つ!」
と手を伸ばし、瞬く間になくなります。
いつもすぐに売れ切れてしまうので、手に入らなかった子どもたちはガッカリしながらも店から離れられずに、たむろっていました。