結党大会を一か月後に控えた頃になると何処からか漏れた情報を頼りにマスコミの取材が殺到するようになった。最早秘密裏に事を進めるのは困難と悟った武藤は、先ず自身がコラムを担当している週刊誌に義理立てして最初に取材に応じる事にした。取材担当記者は、

「単刀直入にお聞きします、何故また政党を立ち上げる事にされたのですか? 動機またはその目的をお聞きしたいです」と問うてきた。これに対し武藤は、

「私が理事長を務める国家戦略企画研究所はシンクタンクとして、これまでに八〇〇件以上、政府への提案を行ってきました。にもかかわらず何らかの検討らしき事が行われたのは僅か二十数件で後はすべて無視されたも同然でした。新聞や雑誌に意見広告を挙げても殆ど反応はありませんでした。

貴方も覚えているでしょう、貴方方の週刊誌にも意見広告を載せたのを……。しかし政府は無関心でした。

そこで、ならば国会質問という手段を使って国会質疑の中で政策提言してゆこうと思ったから新党を立ち上げる事にしたという訳です」と武藤が答えた。

「でも、武藤先生は以前与党から参議院議員へ立候補しないかと誘われた際、即答で拒絶されたという有名な話がありますが、どういう心境の変化があったのですか?」と記者に問われると、

「政治家になる事は今でも嫌いです。なるつもりもありません」と武藤が答えた。

「えっ、新党を立ち上げて党首をなさるとお聞きしておりますが……」と記者が少し狼狽えながら質すと、

「党首にはなりますが議員にはなりません。私は言論人としてのスタンスを捨てるつもりはありません」と武藤が言論人のスタンスは保つと宣言した。

「つまり、党首には就任するけれど選挙には立候補しないという事ですか?」と質され、

「はい、その通りです」と答えた。

「今の段階で政党名が決まっているなら教えて頂けませんか?」と質問され、

「『日本民主保守党』と名付けました。政党の理念は、政党名にもある様に日本という国家観を大切にし、民主主義の大原則である『最大多数の最大幸福』を追求してゆきます。そして、自主独立国家として、自国は自国の防衛力によって守り抜くための憲法改正を実行してゆきます」と立ち上げる政党の理念などを解説した。

「噂では与党を既に離党して、新党に参加する議員が数人いるとされていますが、結党時の現職議員は政党要件の五人を上回るのですか?」と政党要件を満たすのかと質問され、

「はい、衆議院議員四名、参議院議員二名の計六名の参加が内定しております」と武藤が政党要件はクリアーすると答えた。

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