第五条 「野生を育てる」

野性を育てるということは、自然界の中に身を置くということである。自然界の中に在ると、人間の五感は開発され強くなってゆくのだ。

それに、外で思いきり遊ぶとケガをする。骨折も、たまにはする。そこまでゆかなくても、すり傷や足をくじいたりするのは絶え間なくある。これは「自分の身体」を実感することになる。ケガをすると痛いと感じることは、他者を極端に痛めつける人にならないために重要なのである。自分が痛ければヒトも痛いということがわかるのだ。

それから、外で遊んでいると、小さな虫を殺したり、時にはカエルを殺してしまったりする。すると、

「こうすると、生命をとるんだ。殺しちゃうんだ」

……と、しみじみ感じたり、むなしくなったりする。このような体験は、「生命」に対する敏感さを育むのである。

その上、自然は自分の思い通りにはならない。突然、大雨が降ったり、冬なら寒風に耳がちぎれるほどだったりする。だから、自然の中に居ると、常に何らかの緊張感を持たされる。この緊張感は、自分という中心を強める一つの要素である。

「野性」を持つということは、自然界の中にのみ生きてゆける人間にとって、不可欠な事であり、子供が自然の中で遊びなれていることは、子供の自我を強めるために、重要な要素なのである。

ここでは、母親によって「野性」とは、ほど遠く「人形」のように着飾られていた美少女の事を記すことにする。