シュタイナーのことば
島根に帰ってから、松江在住の中村さんが主宰する「ルドルフ・シュタイナーの勉強会」に足を運ぶようになった。シュタイナーの思想を中村さんがわかりやすく説明してくださり、私も自分なりに高橋巌訳の本を読んで、少しずつ理解を深めていった。
そのなかで頭に残ったのは、「自然界に直線は存在しない」ということばだった。ほかのむずかしい思想は忘れてしまったが、このことばだけは、いつまでも記憶に残っていた。そしてこのことばを念頭に置いて、二年前に新しい園舎を建てることができた。
現在、私が園長を務めているのは、幼保連携型認定こども園光幼保園だ。「認定こども園」というのは、幼稚園と保育園の両方の機能を併せもつ、まったく新しい幼児教育・保育の施設である。保育現場では、幼稚園教諭免許と保育士資格の両方をもっている保育教諭が担当している。
これまで幼児教育・保育は、政治の世界ではあまり顧みられることがなかった。しかし近年になって、人生の根幹に関わる重要な時期として注目されるようになってきた。それが施設の多様化や、「保育の無償化」「子ども家庭庁の設置」などで、少しずつ表面に現れるようになってきている。
ところで私の園は、以前は光幼稚園として運営していた。父と母が、地域の皆さんからの要望で七十年前に創立した幼稚園で、園児数は毎年増加していった。ちょうどわが子が入園したころがピークで部屋が足りなくなり、事務室が本堂の一角に追いやられてしまった。
やがて私が園長を受け継ぐと、今度は逆に、毎年園児数が減りはじめた。