第一章 日本経済の分析
今後の日本のとるべき道
国家運営の難しい点は、供給が需要に追いついた時点で、今までやってきた事の全てを変えなければならないというところです。
一九八〇年代までは、少子化や終身雇用、年功序列といったものを積極的に取り入れ、企業の供給能力や国際的な競争力をいかにして押し上げていくのか?という点にのみ、政府は力を注いでおけば良かった時代でした。
しかし一九九〇年代、国家全体の供給能力が国内の総需要に追いついてしまった時点で、今度は国内の需要をいかにして上げていくのか、という方向に政府は舵を切らなければならなかったのです。
日本の政治家と官僚は、これに失敗しました。そして、成熟し切った現在の日本において、更なる国民所得の増加や財政再建を行うためには、今では大量の移民をこの日本に受け入れざるを得なくなってしまったのです。
しかもそれは、今後も日本企業の国際的競争力を維持するためにも必要な事なのです。結論的にいえば、国際的競争力を持った優良企業というものは、優れた市場からしか生まれてはきません。
例えば、水素自動車がその良い例ではないでしょうか? いかに水素自動車が、環境にとってどれだけ素晴らしい車であっても、それが日本車である限り国際標準化される事はありません。なぜなら、国際標準を決めるのは、世界的に一番大きい市場を持つアメリカ、EU、または中国だからです。
彼らからすれば、水素自動車がどんなに素晴らしい技術であっても、それが安全基準を満たすまでの技術力を持った企業が自国にないのであれば、それを自分の国で標準化するはずがありません。