【前回の記事を読む】ベッドの上からSOS!「立テリます」「ヨカッテ」「ハセテおく」ってどういう意味!?
筋萎縮性側索硬化症患者の介護記録――踏み切った在宅介護
備後弁珍問答
すかさず私が「ごめんなさいね。何も詰め込むものが見当たらないのですが」と言うと、反対にヘルパーさんが「詰め込むって?」と私に問い返していらしたのです。
「どこへ、何を詰めるのかわからなくて」と私が言うと、突然大声で笑い出してしまいした。そして、
「お母さん、何か窓に詰め込むとでも思ったの」と私に聞きながらまた笑い転げているのです。「窓をツメル」と言うのは備後弁で 「窓を閉める」と言うことなのだそうです。
またある時は、こんなミステリアスな言葉がヘルパーさんから掛けられました。
「お母さん、アルコールがミテタのでお願いします」と。
私は(「アルコールが見てた」とはどういうことなのかしら)といささか気味が悪くなって、もう一度聞き返しました。「何が見ていたの」と。するとヘルパーさんは「アルコールです」と言って澄ましているのです。
私が「アルコールが何を見ていたの」ともう一度聞くと、今度はヘルパーさんが少しいぶかしげに「アルコールがミテチャイました」と言いながら、アルコールの入っている壜を振って見せたのです。
ここまで来るとかなり血の巡りの悪い私もっとわかってきて「アルコールがなくなってしまったということなのね」と言うと(そうよ、だから言ってるじゃないの)と言いたげな顔がやっとうなずきました。
やれやれ。かなり慣れたつもりでも、まだまだ備後弁の珍問答が続きそうです。
因みに、今私のところにある『備後弁』のストックは、
たとむ=たたむ。ひこずる=ひきずる。 はしる=滲みる。 来ちゃった=いらした。おいでになった。 積んで行く=人間を乗せて行く。 やにこい=難しい。 よかる=寄りかかる。むぐ=むく。(皮などをむくこと)
などなどです。
方言って、味のある、面白いものですね。
命の片道切符
『読売ジャイアンツ原辰徳監督に会いに行こうツアー 二○一三 秋』
(一) 行けるかな
広島市内で開かれた東海大学の同窓会から帰った娘から、
「(平成二十五年)九月十五日にジャイアンツの原辰徳監督が学友会開催の『原辰徳監督を囲む会』に来られるんですって。学友会としておいでいただくので、私やお母さんのような同窓生だけでなくても、家族で出席してもいいんですって。ねええ、お父さんを連れて行けないかな」
と突然の提案をしてきたのです。