長い夢

「話は分かりました。私の力……光ですか? お役に立つのでしたら助力を惜しみません。それと、これからは私のことを英良と呼んで下さい。名前で呼んでくれませんか?」

「承知致しました。峠原様……我等、これから貴方様を英良様とお呼び致します」

英良は大きく頷いた。

「英良様。我は英良様の(しもべ)として今後、力を使わせて頂きます。それと、黒幕の影が我等の周りにちらついていることも事実。断片しか情報がありませんが先ほど申し上げた鏑木は血滅師という裏の顔を持つ人間の女性。その者に完全に我等の力を抑制され。英良様、人界において何か狙われるような心当たりはありますか?」

ない、と英良は答える。

「英良様。これから我等の前に立ちはだかる闇はかなりの難敵かと思われます。その闇に打ち勝つための神器が必要になってくるでしょう」

「神器ですか……?」

「御意」

「何ですか?」

「光の剣で御座います英良様」

「光の剣」

英良は繰り返す。

「その剣。冥府のどこかに封印されている物で御座います英良様」

「それは?」

「闇を引き裂く唯一の物……所謂(いわゆる)宝刀に御座います。我はこれから冥府に赴き、宝刀をこの手に掴み取って参る所存に御座います。それで一つ英良様にお願いが御座います」

英良は何が必要なのか尋ねる。

「我等が窮地に陥った時に、英良様の力を頂きたいので御座います」

「力?」

「その通りに御座います英良様。我が危機に陥った時、力天(りきてん)と放って下され英良様」

「力天」

英良は呟く。

「さらに、多くの力が必要な時には増天(ぞうてん)とお願い申す英良様」 

「増天」

英良は再び繰り返す。

「この後も英良様の多大な光力が必要となります。それと英良様。宝刀だけでは、力不足かと」

英良は黙って毘沙門天を見つめる。

「対となる物が必要に御座います英良様!」

「それは?」