おごり

何かするときはいつも

「努力だけすればよい」と

心にブレーキをかけるのに

ついおごりの気持ちが出た

父の手伝いから農園を引き継いで

一人でやり始め わずか二年目

特別な努力をしたわけではないのに

小さな団体の中で〝良いブドウ〞の賞をもらった 

たまたま ほんの偶然の一致と思い

謙虚に受け止めればよかった

賞をもらったことで

おごりの気持ちがわいて

おかしな自信をもたらした

しかし翌年は賞をもらえなかった

同じようにしてきたのに

父は何度となく賞を取り

作業場にはずらりと賞状を並べている

「そんなに賞が大事か?」と

それを冷ややかな目で見てきた

この種の生産者は少ない

数人での競争だ

知人は毎年賞を取る

昨年知人が取れなかったのは

私がとったから

考えると

彼女は熱心さも知識も私以上である

私以上に悔しかっただろう

年下の友人が言う

「君はブドウへの愛情がたらん」

愛情とは何ぞや

「状態をよく見て何をしてやるべきかを考えること」だと

反省すべき点はあれもこれもあるが

言い訳もある

そもそも都会と田舎を往復しながらの

週末農業の身であり

地元での日常販売はできない

私の販売先は都会で獲得してきたおなじみさん

一年に一回のお届けを待っている

おなじみさんが喜んでくれることだけを

考え そのことしか頭になくなる

配達時のおなじみさんとの数分間のおしゃべり

おなじみさんが口コミで顧客を増やしてくれる

それが楽しみで それが一年の汗に値する

田舎でもらう「賞」はおまけかご褒美

おまけなので欲など持つな!

私のおごった

欲気よくけにくぎを刺した

だけど

「賞」はうれしいので

「愛情」をたっぷり注ぎながら

その中から特別が出れば

もちろん賞をねらうさ ファイトー!