【前回の記事を読む】詩集「村においでなさい」より三編

第三章 満月

爪切らなくっちゃ

めっちゃ伸びてきた

指先が重い 張り詰めている

何ミリ伸びているのかなあ

サシ(モノサシ) をあててみる

サシは探すのに爪切りに手が出ない

身からはみ出た白い爪は

罪の宣告を受け一晩生き延びた罪人のごとく

怠惰な持ち主に感謝をし より白く光る

なんにもしたくない心が流れ出て

寝そべってだらだらと朝も昼も通り越す

怠けきってるくせに言い訳だけは考える

昨日は隙間なくよく働いたから

今日は休息日なんだから

老眼きついし深爪になるわ

あの娘は爪伸ばしてるし

これくらいかわいいもんや

ああ でも指先が重い

五十グラムもの鉄球をぶら下げている感じ

指先が苦しい! 窒息すると騒いでいる

一分一時間明日が近づいてくる

真夜中

だらだらの体からナメクジのごとく

やっと爪切りに手を伸ばした