【前回の記事を読む】詩集「村においでなさい」より三編

第三章 満月

夕焼

バイパスを通っての帰り道、とてもきれいな夕焼けに出会いました

両脇の山々はすでに黒々としているのに空だけが

太陽の残光に朱色に染まっているのです

あまりにも美しく、あまりにもきれいで、涙が出そうで

そんな夕焼けだったから

思わず、そこに来世があると瞬間の思いに駆られてしまいました

来世に行くと

どれほど多くの天上人(てんじょうびと)がいようと私はあなたをすぐ見つけられます

三十年前のままの広い肩幅 若白髪の精悍な顔 形好い骨ばった手、何もかも四十五歳のままだからすぐ見つけられます

―でも

もうあれから時がたちすぎ あなたが愛した可愛い女房は

すっかり変わりました

あなたの肩までしかない小さな体はずいぶん太く たくましくなり

キュートなショートヘアはコロナとやらで出歩かないうちに

白髪交じりのポニーテールになり

老人と言われる年になりました

天上から見ていましたか

あなたの可愛い女房はどこかの知らない年寄になっています

―だから

この目を探してください

ケンカをするといつもあなたは「お前の目がまだ怒っている」と言ってた

そう たった四十五歳でいなくなってしまったあなたに怒っています

許していないのだから 怒っているこの目を探してください

私はあなたを見つけても怒っているので すぐにはあなたの元には行きません

あなたがこの目に気づいてくれるまで

もうあれから時がたちすぎ あなたが愛した可愛い女房は

すっかり変わりました

あなたの肩までしかない小さな体はずいぶん太く たくましくなり

キュートなショートヘアはコロナとやらで出歩かないうちに

白髪交じりのポニーテールになり

老人と言われる年になりました

天上から見ていましたか

あなたの可愛い女房はどこかの知らない年寄になっています

―だから

この目を探してください

ケンカをするといつもあなたは「お前の目がまだ怒っている」と言ってた

そう たった四十五歳でいなくなってしまったあなたに怒っています

許していないのだから 怒っているこの目を探してください

私はあなたを見つけても怒っているので すぐにはあなたの元には行きません

あなたがこの目に気づいてくれるまで