第四章 風が吹いて
風が吹いて
風が吹く 激しい風が吹く
解決しようがない諍いを
忘れようとしているのに
まるで鉄筆で一枚一枚はがすかのように
痛みをともないながら
消えかけた怒りに種火を落としていく
「忘れなくていいよ あなたの時間まで」
いい子になれない身代わりのように
土埃をともない空へ空へと舞い上げていく
時が過ぎ
風が吹く やさしい風が吹く
刈り取ったタンポポなのに
まるでせめてもの償いと言わんばかりに
綿毛を空へ空へと舞いあげていく
あれはまだみんなが若く
自分の思いで精一杯で起きたこと
みんな年を取ってまぁるくなった
「もうみんな忘れようよ」と
過ぎたことにこだわる心を優しく丸くして
遠くへ遠くへ綿毛を飛ばしていく
今日も風が心を 空へ 遠くへと連れていく