【前回の記事を読む】「おっさん何でそんな速いねん」獣道を走り回った幼少期に身に付いたのは“モンキーウォーク”
序章 我がへんろ旅、発心の記――88(パッパッ)の時間帯で得た喜び
三 へんろ旅に先立つ「三百名山」挑戦
ただ、最近の様に装備だけで何十kgという様なやり方では、その重さだけでとてつもない負担となると思います。
頭に入れるといえば、先ほど書いた様に、一度登り始めるとかなりの速度でぐんぐん先を急ぎますので、地図というのをほとんど見る事もありません。登り始めてから地図を読むのではなく、出発までに繰り返し繰り返し地図を見て、頭の中に平面の地形が立体的に描けるまで叩き込むのです。
実際、そうしたやり方が身に付くと、現地で歩いている時も周囲200~300mの広がりが、常にわかってくる様になります。
それだけでなく、その道を最近誰かが通ったのがわかり、また、誰かが自分のすぐ後を歩いているのが直感で掴めます。
ある時、この経験を山道で一緒になった三角点の測量技師の方(仕事で1日に2座を登る事もある由で、当時すでに百名山早登りの新記録を持っておられました)にお話ししたところ、同じ様な経験をされていると聞いて、我が意を得た思いをした事もありました。
この様にして、百名山は少なくとも2度、その後に別コースでも登りましたのでほぼ3回は踏破。残る二百名山を次々に登って、残り僅かになるまでにはやはり10年近く掛かりました。
それについて、登山記録だけは誤魔化すわけにいきませんので、何月何日にどこの山へどのコースで回るという計画と共に、記録はきちんと残して地元の警察に提出しましたが、自分の手元には正確な控えを取っておらず、今になって少し残念に思っています。
その後のへんろ旅に際してしっかり記録を取ったというのも、そうした気持ちがあったからかもしれません(第七章を参照)。
四 八十八カ所へんろ旅を発心!
ところが――目標の三百名山をあと一つというところまできた時、とんでもない目に遭いました。
滋賀県の金糞岳(標高1317m)で下山する際に、登山道でばったり熊と出くわしてしまったのです。