「ニシベツ川は、大きく分けても、本流とキヨマルベツ川、測量川、シカルンナイ川、ホンベツ川という四つの支流がある」

「四つの支流と、本流の上流と中流、下流、この七カ所で、俺たちは『イオン』を電気伝導度で測定した」

「酪農開発されていない上流に比べて、酪農開発されている中流や下流、そして四つの支流の電気伝導度は、三倍になっている。つまり『イオン』が多い。酪農開発によって河川が汚染されているのは確かだと俺たちは考える」

酪農科四年生と三年生のざわざわがさらに大きくなる。ここで大河は決定的な発言をした。

「四つの支流と、本流の上流と中流、下流、この七カ所の流域の乳牛飼養頭数と、電気伝導度の関係を解析した。その結果、乳牛が多くなると、電気伝導度は上がる。つまり、牛を増やせば、化学肥料も家畜糞尿も酪農排水も増えて、それが川に流れ込み、川を汚染するということは、ほぼ確実だということだ」

「俺たちは、この問題を何としてでも解決するつもりだ。はっきりと言えることは、酪農開発がなければ、サケ・マスには何ら問題はなかったということだ」と、大河が言い終わるか終わらないかのタイミングで、酪農科四年生と三年生は爆発するかのように猛反発を始めた。

「電気伝導度が高くなれば、サケ・マスが死ぬことは確かなんか⁉」

「『イオン』とやらが、サケ・マスに毒なんか⁉」

「電気伝導度だけで、川を汚していると決めつけるんか!」

「排水は、きちんと処理槽をつけているぞ! 見てもいないくせにふざけんな!」

「堆肥盤は屋根がかかっている。流れていくはずがないだろ!」

「俺たちは精一杯のことはやってるんだ! これ以上何をしろと言うんだ!」

怒号が飛び交う事態となってしまった様子に、座長の吉崎と計時の三木は、また始まったと呆れている、と同時に、向かい側に座っている中原校長が、どうやって事態を収拾するかについて様子を伺っている。

「座長! 発言してもいいでしょうか?!」

中渡千尋が唐突に発言した。怒号が最高潮に達している中での発言である。

生活科二年生の伊藤と高島は驚き、小声で、

「やめときなよ。千尋が言っても収まらないよ」

「男子のケンカに関わらない方がいいよ」

その一方で、座長の吉崎は発言を許可した。

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