第一章 嫁姑奮戦記

おばあちゃんの心のつぶやき

今日は手術したらしい。一体どこの手術したのやろ。どこも悪くないのに、病院の金儲け違うか。

腕にはまた包帯が巻いてある。うっとうしい。鼻にも何か突っ込んであるし、おでこも気色悪い。

指の先も何やらはめられ手を動かそうとしたら、動かしたら駄目と嫁に叱られる。こんなうっとうしい物皆取ってしまえと思って自由のきく右手で鼻にはめてある物を取ったら駄目と言われ、またはめられる。

今度はおでこのガーゼを取って投げ捨てたら、何でこんないらんことばかりするのと叱られる。腕の包帯も気になるので取り外しにかかると、駄目! と大声で言われとうとうベッドの手すりに手を縛られてしまう。

どうも鼻が気色悪いので、も一方の手で取ったら、いいかげんにしてと叱られ、これがないと酸素が体に回らなくて死んでしまうよと脅される。こんながんじがらめにされるくらいなら死んだほうがましやわ。包帯したほうの手は嫁がしっかり握っているらしい。こっちも負けるもんかと引っこ抜こうとするが相手は益々きつく握って痛い。

何でこんな目に遭わんならんねん。「そんなきつう握らんといてえな、そんなうちが憎いんか」と思わず本音を言ってしまった。全く嫁ときたら一日叱ってばかり。孫は優しいのに。

「全くろくなことしないんだから」と言って昨晩孫が看てくれていた時、点滴を抜いて大騒ぎになったと言う。全く身に覚えがないので、「え、うちそんなことしたん? 全然覚えてへんわ。まあこにえらい目に遭わせたんやなあ」と言う。孫や看護婦さんには気の毒した。

「ほら、そんなこと言いながらまた手を動かす。今調べているところやからじっとして!」

何を調べているのか知らんけど、とにかく脚は動けへんし、鼻もおでこも気色悪。どうにかならへんかな。

手術はうまくいったようだ。良かった。部分麻酔なので意識ははっきりして変わりなく、先生や看護婦さん方が酸素の量や血液の検査、血圧測定に体温測定などできりきり舞いの状態である。

血液が少なめで酸素不足になると、脳のダメージが強くなるからとの説明があり、結局、術後輸血することになる。本人はいたって元気で術後とも思えない。

点滴する手は動かすし酸素は抜くし額のガーゼは取るし、やりたい放題だ。私のほうは目と手が離せない。点滴の腕は二重、三重に防御してあるものの指先に酸素モニターのクリップが挟んであるのでしっかり握っていなければならない。

私も馬鹿力には自信があるが、彼女にはかなわない。すごい力で私の手から自分の手を引き抜き、あっという間に酸素を外しモニターのクリップも外してしまう。