第4章 適応障害についての疑問・1

精神障害の基準に照らして

適応障害の診断基準は、第2章で見ましたが、ある程度明らかな輪郭があります。

ひとつには、ストレスの原因となっている出来事が「はっきりと確認できるストレス因」(DSM‐5)、「重大な生活の変化、ストレス性の生活上の出来事」とし、重篤な身体疾患、死別、分離体験、移住、亡命などをあげています(ICD‐10)。

避けることのできない、自分の力ではどうすることもできないような出来事です。自分の裁量の余地はありません。

もうひとつは発生の時期です。その出来事が起こってから3カ月以内に発症するとなっています。

ガーン! と自分ではどうすることもできない出来事に見舞われ、その反応として比較的早い時期に症状が出るという感じです。そしてその症状が6カ月以上続く場合は他の疾患を考えるとなっています。

しかし、繰り返しになりますが、若者のエピソードとどうも合っていません。まずこのストレスの原因となっている出来事は就職や仕事で、重篤な身体疾患、死別、分離体験、移住、亡命には当たりません。多くの場合、本人が希望して来たのです。

そしてまた、その職場や仕事を辞める自由もあります。診断基準で想定されているストレスの種類や重大さが異なっているのではないかということは否めません。

そして症状の発生時期ですが、はっきりしません。メンタルクリニックを訪れるまで3カ月以内とは限りませんし、1カ月から1年以上とまちまちです。先に述べた重大なストレスのように、ある日突然見舞われるというよりも、毎日の仕事が進行する中での何か(きっかけ、あるいは継続されたストレスの結果など)になり、発生時期は特定できません。

そして診断基準で言及されていないのが、身体症状です。適応障害の主な症状として、精神的な苦痛と社会生活上の重大な機能の障害と説明されています。それに伴うものとして、抑うつ気分、不安、行為障害があげられています。身体症状については言及されていません。

何となく常識的に「精神的に落ち込めば身体症状も出るさ」と言いたくなりますが、基準としては言及がありません。しかし若者の訴えの前景、始めに訴えるのは、身体症状です。