第二部 カフェ「MICHI」が誕生してから

波紋

翌日、史香と華歩は普段通リに登校した。いや登校したはずであった。しかし、家を出て2時間後、二人は帰ってきたのだ。涙が溢れている。二人の顔を見て、仁美は、全てを察するのであった。きっと、娘たちは、生徒たちから無視され、陰口をたたかれたに違いない。最も耐えられないのは、とても仲のよかった友達からの仕打ちであったのだろう。

仁美は、今朝方から、官舎の友人達に同じような仕打ちを受けていた。経験したことのない苦しみを味わっていたからこそ、娘たちの気持ちを痛いように感じることができたのだ。何ゆえに、人は、傷口に塩を塗るような振る舞いをするのか、仁美は、やるせない気持ちをどこにも持っていくことができず、ただ史香と華歩を抱きしめるのであった。

史香と華歩は登校することを度々拒んだ。仁美は、娘たちに付き添って学校に行き、教員に協力を求めたが、事態が画期的に改善することはなかった。

史香と華歩にとっての救いは、二人共秀才であり、周りから一目置かれる存在であったことである。しかし、仁美には二人の娘の心が健やかに成長するのかどうか、背中に寒気を覚えるような不安を感じていた。